まんがタイムきらら大好き!

まんがタイムきらら大好き!

カレンチャン(ウマ娘)と感傷マゾ。

 こんにちは。ウマ娘はプレイしておられるでしょうか?私は来たるべきアドマイヤベガミスターシービーマチカネタンホイザのため石を貯めながら細々と続けております。先日無事ライブラ杯ブロンズを獲得致しました。

 

 さて、今回のイベントで追加されたカレンチャンSSRサポートカードのイベントを回収し、居てもたっても居られなくなったのでこの記事を執筆する次第であります。カレンチャン育成シナリオのネタバレを含みますのでご容赦ください。

 

 カレンチャンは他のウマ娘と違い、最速でも最強でもなく、「カワイイ」の追求を第一目標に掲げるウマ娘です。常に一番カワイイ自分であるために、オシャレもライブもレースもSNSも、ひたむきに貪欲に研鑽を重ねる。これは本当にすごいことで、速さや強さと違い「カワイイ」は明確な指標が存在しません。なぜなら「カワイイ」とは人によって全く意味が違ってくる曖昧で不確かなものだからです。それでも彼女は、その曖昧で不確かなものを、ただ自分だけのアイデンティティーとすべく奮闘するのです。この過酷な戦いに挑む彼女の根幹を支えるのは絶対的な自信です。「自分はカワイイ」という絶対的な自信。自身の才能への絶対的な信頼。「自分を信じて突き進む」ということを、ある種狂気的な領域にまで達しながら行えるこの様が、とてもまぶしい。だから私は、このキャラがとても好きです。自分にないものを持っているから。同じ理由でオペラオーも好き。

 

 カレンチャンは生まれながらにして「カワイイ」の追求者でしたが、その道を確かなものにした彼女の立脚点ともいうべきイベントは存在します。それは、あなたの記憶の中にもあるはずです。思い出しませんか?遊園地で遊んだ帰り道、お母さんとはぐれて泣いている子を見つけて───────

 

f:id:shamiko928:20211029120218p:plain

 

 ───とまあ。幼い頃遊園地で出会い、自分の夢を告げ、それを笑わずに背中を押してくれた男の子(or女の子)、そのエピソードがカレンを支える自信の支柱として今日まで機能しているわけです。そして、カレンの夢を後押しした子供こそが我々トレーナーであり、お兄ちゃんであり、お姉ちゃんであるのです。カレンチャンの育成シナリオでは、我々である「お兄ちゃんorお姉ちゃん」がカレンと運命的な再会をするところから始まり、カレンがカワイイの覇道を突き進んでいくのをサポートしながら、カレンチャンというウマ娘に惹かれ、深い絆を構築していく流れが描き出されています。トレーナーはカレンチャンの魔性の魅力に完全に囚われ、カレンもまたトレーナーを放さないという、この二者だけで完結した関係がたまらなく良くて、”ヒロイン”カレンチャンのベストエンディングとして完璧に、美しく仕上がっています。

 

 カレンチャンの育成シナリオをこなした人間は、この結末を知っています。カレンチャンを担当ウマ娘として選んだ場合の未来。美しい二者関係。カワイイカレンチャンがカワイイカレンチャンであるための、ひとつの幸福な在り方。

 

 だからこそ、SSRカレンチャンのイベント、そしてダイワスカーレットファン感謝祭イベントに出てくるカレンチャン、これが、とても残酷に感じてしまうのです。

 

 SSRカレンチャンは、カレンチャンの育成には使えません。つまり、SSRカレンチャンというサポートカードに登場する世界線カレンチャンは、我々と担当契約を結んでいないカレンチャンなのです。だけど、その世界線でも我々はカレンチャンと出会っているはずです。子供の頃、遊園地で。それは我々にとってはなんて事のない、時の摩耗によって失われてしまった幼き日の思い出の一ページでしかないにしても。例え奇跡的な再会を果たして相手の顔を見ても、全くの初対面に感じてしまうとしても。

 

 だけどカレンだけは覚えている。数分に満たない会話だったとしても、初めて自分の夢を肯定してくれた経験はカレンの血肉の一部となって消えない爪痕を残している。だからどんな世界線においても、カレンはトレーナーに全幅の信頼を置いている。既にトレーナーには別の担当ウマ娘がいるのに、甘えてしまう。そんなカレンチャンを見てると……ううう……うおおおおおーーっ!なぜだぁーーーっ!!!なぜ俺はァーーーーーッ!!!!

 

 あったはずの未来。カレンチャンとの幸福な未来。僅かな出会いのすれ違いで、それは容易に失われてしまった。その未来を、カレンチャンだけが夢想している。俺たちだけが知らない。なぜカレンチャンが自分に付きまとうのか、なぜミスコンに来てほしいなんて言われるのか。無差別に唾でもつけてんじゃないかという下衆の考えが頭を過ぎりかねない。違うのだ……。彼女はただ純粋な思い、「カワイイ」で皆を幸福にしたいという夢、それにただひたむきなだけなのだ。

 

 たとえ「お兄ちゃんorお姉ちゃん」との再会が遅かったとしても、カレンの本質が変わることはない。何にせよ、カレンチャンは絶対的な「カワイイ」の伝道者である。そこに「お兄ちゃんorお姉ちゃん」という存在がいるかどうか、という違いでしかない。カレンは何も求めない。「カワイイ」と言ってくれさえすれば、それ以上を要求しない。別の娘のトレーナーだから、「トレーナーさん」なんて他人行儀な呼び方をして……うるせえ!どけ!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!

 

 カレンチャンを育成しない限り、トレーナーにとってカレンチャンはどこまでも「他人」であり、カレンチャンにとってのトレーナーは「お兄ちゃんorお姉ちゃん」には成り得ない。だけど、カレンチャンは「お兄ちゃんorお姉ちゃん」を求めている。それを見る、第四の壁の先にいる我々プレイヤーは、カレンチャンとの「あったはずの未来」───残酷にも、ダイワスカーレットを育成している世界線では、絶対に起こり得ない未来を想起させられる。この無為な喪失こそが感傷マゾだ。ウマ娘をプレイし続けるにはカレンチャンばかりを育てているわけにはいかない。SSRカレンチャン自体今後も色んな育成に使いそうなくらい強い。ホームに置くカレンの笑顔を見るたびに、胸が締め付けられるように痛むのだ。

 

 チュートリアルダイワスカーレットのファン感謝イベにカレンチャン登場させた奴人の心ない。天然小悪魔系女子的な描写を後から二重の文脈に回収していくのマジでうまくて腹立つ。はあ。ウマ娘のテキストの中でも屈指の出来なのが、このカレンチャンにまつわるストーリーのすべてだと思います。かしこ。